drizzle Blues

どんよりとした雨模様で、その日は朝から気分的にはブルーであった。出掛けなければならない用事があったので、先日購入したばかりのレコードを尻目に、足取り重く外出した。

向かった先は渋谷で、ある学校の退学の手続きをするためだった。その学校には入学して以来一度も通う機会がなかった。丁度入学した時期にコロナが日本に蔓延し始め、居を構える東京では緊急事態宣言なるものが発令され、授業の開始時期が延期されたのであった。

ついた先の渋谷では、雨は止むことなく、持ち合わせの折りたたみ傘は機能せず、歩くたびに少しづつ体を濡らすこととなった。

少しだけ早い時間についてしまったので、タバコでも吸おうと喫煙所を探すが、渋谷には喫煙所が少ない。そのうちの一つの喫煙所は日夜人が溢れているので、広々とした駐車場で喫煙するのが常であった。小さい折り畳み傘を差しながら吸うタバコはたいして旨くなかった。

緊急事態宣言がだされ、これから日本はどうなるんだという漠然とした不安を抱きながらも時は流れ、再び授業が開始される時期にはこちらのモチベーションが去りつつあった。下がりきったモチベーションのまま授業を受ける自信はまず無かったし、休日を利用して渋谷にまで通学も途中で断念すると思えた。しかし、一応は金を払い学ぶ医意思はあったのだから、少し期間を設ければもしかしたらまたやる気が表れてくるに違いない。休学の申請はその時の最良の選択に感ぜられた。

それから3ヶ月程が経ち、世の中が以前通りに元に戻るだろうというあわよくばの期待は軽々と裏切られることとなり、未だコロナウイルスは世間に蔓延っている。

その3ヶ月の間に勉学のモチベーションが戻ることも無く、退学の期限も迫ってきたので、もうこれ以上自分への期待に頼る必要は無いだろうと思い、退学を決した。

もちろん、入学時に支払った代金は全て帰ってくることは無い。どれだけ帰ってくるのか恐ろしくて、調べもしない。それなりの出費になることは間違い無いだろう。

退学の申請自体はものの5分で終了した。あまりにもあっけらかんと終わってしまったので、それまでの自分の学びの意欲はなんだったのだろうとつい自分を疑いたくなった。

 

帰り、いつもならばレコード屋でも覗くのであろうが、つい昨日レコードには大枚を散財したので控えた。

しかし、豪物欲を持つ自分は、「あ、漫画ほしいかも」とふと思い、秋葉原に向かうことにした。

まだ新品で買えるような漫画などは新品書店で買うようにはしている。しかし、最近の趣向が割と古めな漫画だったりするので、中古書店はありがたい。秋葉原で漫画といえば、まんだらけ秋葉原店に決まっている。そういう訳で、足早と僕らのまんだらけに向かうことにした。

チラホラ見かけるメイド、街を足早とかけ歩く大人のお友達たち、パソコン関係の店、パワー系フードの店、二次元の看板。これらで彩られる秋葉原には高校時代よりまんだらけを中心にお世話になっている。

まんだらけでは漫画をいくつか購入し、それまで少し沈んでいた気持ちが幾分か晴らされた。しかし相変わらず天気は小雨模様。傘を差すか差さまいか微妙な判断が問われるところだが、大人のお友達たちは勇敢にも傘を差すことなく街を闊歩していたので自分もそれに倣って傘を差さないことにした。

 

少し寄り道をしたり、一週間分の食材を購入したり、気づけば秋葉原から1時間ほどかけて歩いて自宅に帰宅していた。道中、執拗にも小雨が折り畳み傘では覆うことのできない足元をしきりに濡らしていた。